KEIKO KOMA

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更新日 2010-01-09 | 作成日 2008-03-30


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姫の香り

国を離れた高句麗人は、行く先々で大きな木の様に大地の中心となり、未来に人間が生きられる国創りを行ったのです。
古人の魂の声は、今語りはじめ、その声に懐かしさを覚え、集う人々の群れが出来はじめました。
姫の香りに吸い寄せられる様に集う人々の瞳は輝き、一人一人の胸の内に秘める気持ちは永遠への道標となる輝きとなっています。
やっと出会えた喜びが自分一人のものでないことを誰もがわかっています。集う一人一人の胸の内は、長い長い冬の時代を耐え、やっと迎えた春の光にあふれ、さわやかな風が吹いています。この大地を歩き続けた先にある、海を越えた向こうにある山を心に出発の時は来ました。
身づくろいを終え、朝陽の中、静かに歩を進めました。途中、夜の暗闇の中、獣や化物が襲いかかってきます。高句麗人は一瞥もせず、歩き続けます。一休みする時、さわやかな風が吹きます。姫の輝きを内に生きる高句麗人には、交わす言葉は少なくとも互いに通じ合える心があります。姫に出会った心には愛が生まれています。
この先、どの様な道があろうとも行く道は、海の向こうのあの父の魂宿る山です。
魂の声に心ゆさぶられ、目がさめました。
人間が生きるということは、自分一人ではなく、ずっと昔から生きてきた人の魂と共に生きていることを、心の内ではっきりと感じたのです。
幼い頃、風が吹くと聞こえた魂の声は、言葉になりませんでした。言葉にはならずとも悲しみの声であることを感じていました。
京都の地で語りはじめた魂の言葉が私の胸に残ります。
永遠の道標となった姫の輝きは美しく、愛そのものと感じます。
多くの人に支えられ生きていく人生なのです。